「つみたてNISAは、少しの金額からこつこつと投資ができる」
「投資の未経験者でもはじめやすい」
と言うような話を聞いたことはありますか?
まさにその通りです。
つみたてNISAは、初心者でもはじめやすい投資なんです。
その上、税金が非課税になるというメリットもあります。
貯金以外の資産形成に、まずはつみたてNISAかな?と思っている方もいるのではないでしょうか?
しかし、メリットだけを見て、つみたてNISAをはじめるのはちょっと危険です。
つみたてNISAにもデメリットがあります。
「損をしてしまった!」
「こんなはずじゃなかった!!」
なんて、はじめたあとに後悔しないように、しっかりとデメリットもおさえておきましょう。
今回は、つみたてNISAのデメリットにテーマを絞ってお話ししたいと思います。
説明するデメリットは、全部で5つです。
そして、この5つのデメリットが、考え方次第でメリットになったりするんです。
そんなつみたてNISAのデメリットを知って、デメリットが許せるか許せないか、メリットと感じることができるのか 考えてみましょう。
デメリットを知る前につみたてNISAの基本が知りたい方は、下の記事も読んでください。
目次
つみたてNISAの5つのデメリット
①元本割れのリスクがある
②対象商品が少ない
③非課税枠の繰越、再利用ができない
④損益通算、繰越控除ができない
⑤口座に制約がある
【デメリット1】元本割れのリスクがある
投資をするからには避けては通れないリスクです。
投資は、元本が保証されていません。
銀行にお金を預けたら、預けた分のお金は確実に戻ってきますよね?
例え銀行が潰れても、1千万円まで保証してもらえます。
しかし、投資は、預けた分のお金を保証してくれません。
今まで投資した金額が、減ってしまう可能性があるんです。
自分が出したお金が減ってしまうことを、元本割れと言います。
投資信託は、私たちのお金を専門家が運用して資産をくれます。
しかも、つみたてNISAで扱われているのは、金融庁が厳選した投資信託ばかりです。
しかし、いくら金融庁が厳しい基準を設けても、専門家ががんばって運用してくれても、元本割れのリスクはあるんです。
どんなに安全に投資をしようとしても、元本割れのリスクは必ずついてきます。
しかし、リスクがある代わりに、運用がうまくいくと得るものも大きくなります。
つみたてNISAをはじめるときは、元本割れのリスクがあることを忘れないようにしましょう。
あらかじめお金が減ってもいくらまでなら後悔しないか考えることも大切です。
【デメリット2】対象商品が少ない
つみたてNISAで扱っている商品は、専門家にお金を運用を任せる投資信託です。
その上、金融庁が厳しい基準をクリアしているものばかりです。
初心者も比較的安心して選ぶことができるでしょう。
しかし、見方を変えればデメリットになってしまうんです。
・取り扱っている投資信託が少ない
つみたてNISAの対象になっているのは、2019年5月3日時点で、投資信託が160本とETFが3本の計163本です。
つみたてNISAで購入できる投資信託は163本ですが、実際にはもっと多くの投資信託が存在しています。
例えば、有名なネット証券会社で、取り扱っている投資信託の数を検索してみると、2019年8月6日の時点でこんな感じになっています。
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SBI証券……2652本
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楽天証券……2641本
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マネックス証券……1182本
つみたてNISAで取り扱っていない投資信託以外にもかなりの数があります。
数が絞られていると、選びやすいという点ではメリットです。
しかし、選択肢が大幅に減ってしまいます。
・個別株が買えない
個別株のメリットに、株主優待がありますよね。
商品券や割引券がもらえたりするので、少しお得な気分になります。
投資の楽しみの1つですが、残念ながらつみたてNISAでは個別株を買うことができません。
【デメリット3】非課税枠の繰越、再利用ができない
まず、非課税枠の説明をします。
つみたてNISAで投資できる上限額は、1年間で40万円です。
この40万円で買った投資信託の利益には、税金がかかりません。
非課税にできる金額の枠なので、非課税枠と言います。
・非課税枠の繰り越しができない
例えば、毎月2万円ずつ積立すると一年で24万円分の非課税枠を使ったことになります。
16万円分の枠が空いていますね。
この16万円分は未使用ですが、使わなかったからと言って、来年分に上乗せできません。
つまり、本来の非課税枠40万円+未使用分16万円=56万円の積み立てが可能、とはなりません。
これが非課税枠は、繰越できないということです。
・非課税枠の再利用はできない
非課税枠の再利用ができないについて説明していきます。
早速例をあげてみましょう。
ある年に30万円分を投資しているとします。
30万円分はすでに投資しているので、非課税枠はあと10万円ですよね?
年内に投資した30万円分の投資信託をすべて売りました。
手元には何一つ投資信託が残っていません。
30万円分の枠は空いたはずですが、残りの非課税枠は10万円分なんです。
一度使った非課税枠分の投資信託を売ってしまったので枠が空いているように見えますが、非課税枠が再び使えるようはなりません。
これが、非課税枠の再利用ができないということです。
手元に投資信託を保有しているわけでもないのに、非課税枠が減るのはちょっと納得がいかないですよね。
【デメリット4】損益通算、繰越控除ができない
どちらもつみたてNISA以外に証券口座を持っている方のデメリットです。
・損益通算
投資の話をしていると難しい言葉がちょくちょく出てきますね。
まずは、損益通算から説明します。
損益通算は、損失と利益を通しで計算するという意味です。
利益はもちろん儲けですね。
損失は、損した分です。
上で話した元本割れした分ということですね。
複数の証券口座を持っている人は、それぞれの口座の利益や損失を合わせて計算します。
A証券は利益が30万円、B証券は損失が20万円、C証券は利益が10万円あったとしましょう。
全部あわせると
A証券30万円-B証券20万円+C証券10万=20万円
利益が20万円ということになりますね。
ただ足し算引きと算をしただけですが、損益通算ができるのとできないのでは、税金の金額が変わってくるんです。
投資の利益には約20%の税金がかかります。
上の例で損益通算した場合、利益が20万円だと4万円が税金として引かれます。
損益通算しないと
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A証券の利益30万円には税金が6万円
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B証券の損失20万円は利益がないので非課税
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C証券の利益10万円には税金が1万円
全部で税金は7万円になってしまいます。
損益通算した場合と比べるとその差は3万円です!
・繰越控除
繰越控除は、損益通算をしても損失の方が大きくなったときに使える制度です。
例えば、2020年にA証券で利益が20万円、B証券で損失が50万円出たとしましょう。
損益通算しても損失の方が30万円もありますね。
この場合、損失の30万を次の年以降の3年間、その年の利益から引くことができます。
これが、繰越控除です。
今回の例えだと損益が30万円ある状態で2021年を迎えます。
2021年にA証券で利益が30万円、B証券で利益が10万円出たとします。
繰越控除することによって、2020年分の損益を引くことができるので、
A証券30万+B証券10万円-繰越控除30万円=10万円
2021年は10万円分が課税対象になります。
損失が出ることは辛いです。
でも、損益通算や繰越控除ができれば、ほんの少し節税できるので、気持ちが軽くなりますよね。
しかし、つみたてNISAでいくら損失を出しても、損益通算や繰越控除の対象になりません。
つみたてNISAの損失は、節税面ではまったく効果を発揮しないんです。
【デメリット5】口座に制約がある
つみたてNISAの口座には制約があります。
まず、大事なことを言います。
つみたてNISA口座は、1人1口座しか持てません。
このルールを前提に、色々な縛りがあるんです。
①NISAとの併用ができない
つみたてNISAとよくにている制度に「NISA」があります。
NISAは、つみたてNISAと同じで、投資で出た利益に税金がかからない制度です。
違いは非課税期間や、投資できる金額などです。
つみたてNISAは、非課税期間が20年で、非課税枠は40万円でしたね。
NISAは、つみたてNISAと比べて非課税期間は5年と短く、非課税枠は120万円と多いのが特徴です。
投資対象も幅が広く、株にも投資ができます。
つみたてNISAとNISAを使って賢く節税!
つみたてNISA以外にも、NISA口座を作れば、株主優待がもらえる株式にもチャレンジできる!
と、言いたいですが、つみたてNISAとNISAは、どちらかの口座しか持てません。
1人1口座を正確に言うと、つみたてNISAとNISAのどちらかを1人1口座持つことができる、が正しいルールになります。
どちらにもメリットとデメリットがあるので、どちらを選ぶか悩ましいところですね。
つみたてNISAとNISAを比較した記事があるので、詳しく知りたい方はこちらも見てください。
どちらか一つしか選べませんが、途中で口座を切り替えることができます。
もし、どちらかを選んで運用してみて、しっくりこないと思った場合は、もう一つに切り替えられます。
②他の金融機関
つみたてNISAは、1人に1口座しか持つことができません。
A証券会社でつみたてNISA口座を作って、新たにB証券会社にもつみたてNISA口座を作って……とは、できません。
そんなにたくさん口座はいらないと思うかもしれませんね。
でも、他の金融機関で口座が作りたくなる場合もあるんです。
それがどんな場合かというと、どうしても欲しい投資信託が別の金融機関でしか扱っていない場合です。
どうしても欲しいのに買えないのは悔しいですよね?
そう言う場合は、今あるつみたてNISA口座を止めて、別の金融機関で新たにつみたてNISA口座を開設するようになります。
ただし、金融機関を変更できるのは年に1度だけ。
その上、書類のやり取りが多く、手続きが面倒です。
元々口座を持っている金融機関と書類のやり取りをして、金融機関から出された書類を新しく口座を作りたい金融機関に提出して……と、簡単に変更ができません。
また、新しく作った口座に今までつみたてNISAの投資してきた投資信託を移すこともできません。
では、元々持っていたつみたてNISA口座はどうなると思いますか?
つみたてNISA口座は一つしか持てないので、新しく投資信託を買うことはできません。
投資信託を買うことはできませんが、投資信託を売ることと、非課税期間いっぱいまで運用はできます。
③資産の移動
古いつみたてNISA口座から新しいつみたてNISA口座に資産を移動できないとお話ししました。
他にも、一般口座で運用していた投資信託をつみたてNISAの口座に移すこともできません。
まとめ
①元本割れのリスクがある
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投資したお金が減ってしまう
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リスクがあるから利益が大きくなる
②対象商品が少ない
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選べる投資信託が少ない
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株が買えない
③非課税枠は、繰越も再利用もできない
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非課税枠が余っても来年分の枠に上乗せできない
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投資信託を売っても非課税枠は元に戻らない
④損益通算、繰越控除できない
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つみたてNISA以外に証券口座がある人限定のデメリット
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つみたてNISAの損失は、デメリットでしかない。
⑤口座に制約がある
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NISAと併用できない
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つみたてNISA口座は1人1口座
金融機関の変更は年に一回だけ
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他の口座からつみたてNISA口座に資産を移動できない
少し考え方を変えると……
5つのデメリットをできるだけわかりやすく説明してみました。
元本割れのリスクがあるのは不安ですよね?
それに、株主優待にちょっと魅力を感じていても買えなかったり、将来他の口座を持って損益通算する事になったら……
と、不満に思うこともあったと思います。
しかし、ちょっと考え方を変えてみてください。
元本割れのリスクがありますが、その分利益が大きくなる可能性があります。
銀行にお金を預ければ、元本は保証してくれますが、利子はほとんど増えません。
投資の場合は、リスクがあるかわりに、お金が大きく増える可能性があるんです。
選べる投資信託が少ないのは、金融庁が厳しい基準を設けて比較的安全な投資信託を厳選してくれているからです。
ここが、初心者には大きなメリットになりますよね。
損益通算や繰越控除ができないのは、マイナスでしかありませんが、つみたてNISA口座しか保有しない場合は、それほどデメリットではありません。
考え方によっては、デメリットがメリットになったり、気にならなくなったりするのではないでしょうか?
デメリットが、メリットになるのか、気にならないものなのか、許せないデメリットなのかを見極めましょう。
そして、デメリットがそれほど気にならないようであれば、つみたてNISAで資産形成をはじめてみてはいかがでしょうか?